伊坂幸太郎「グラスホッパー」

借り物。とてもよく出来た小説だった。あいかわらず台詞が上手い。ネタバレ多めに感想する。
全体が作中で言われる幻覚の構造になっていて、長すぎる赤信号の点滅で引きずり込まれ、長すぎる回送列車の通過待ちで覚める。
押し屋や自殺屋、劇団やスズメバチといった奇妙な人間達がうろつきまわる。死んだ人間が現れる。仙人のような元カウンセラーの言葉が呪いの様にまとわりつく。偶然がまるで繋がっているかのように起きる。
その悪い夢の中で、活力に満ちた鈴木の妻と、蝉を信頼してる岩西が印象的に温かかった。
「わたしはね、一対一の勝負をしてるんだから」
「負けんなよ」