米澤穂信「小市民シリーズ」について

未整理。未読の人は読まない。
基本的にふたりとも他人の内面をわかろうとしない。残酷。人間関係を力でしか捉えない。おそらく自分が心底認められる人間にほとんど出会ったことがないし、そうでない人間はどうでもいい。
善悪について単純。せいぜい法律違反=非であるとしか考えていない。内面を顧慮しないこととつながる。そこだけ小市民的というのは皮肉か。
いい人は正義を楯にして自分たちを追いつめる、というような記述が春期‥にあるが、善悪の是非ではなくて、敵になるかならないか、というレベル。
人を傷つけたことを後悔している記述もあるが、それもおそらく同情からではなくて傷ついた人を見て自分が傷ついたから。
ふたりが小市民になろうとしたのは何かに敗北した経験から。自分たちのしたことを悔いているというよりは自分たちのやり方が下手だったことを悔いている様子。
結局秋期‥の終わりでは個人としてお互いに敵う相手は今ここにはほとんどいないと思っている。小鳩は夏期‥の終わりではお互いの傲慢をふたりだけで認めあって閉じた関係を作るのは気持ち悪いといっているが秋期‥の終わりではそれこそが我を曲げて生きるには必要だと思い直している。
ふたりの間に恋愛感情はあるともないともいえない。お互いに唯一内面を想像する可能性があるのかもしれない。
名探偵と怪盗が学校に放り込まれたようなものなのかもしれない。探偵は暴かなくていいことを暴くし、怪盗は事件を起こしても気付かれない。
あと秋期‥の人間失格とかなんとかで欠陥製品で戯言遣いを思い出したけどこれは蛇足。