最近の労働関係のニュースの多さはどこからやってきたか

※誰かの考えの足しになるかもしれないので、大学で書いたものを短くして載せておこうと思う。
 
正解はバブル崩壊前に書かれたこの文章からわかる。
 

まず、低賃金労働層をどのように評価するかということである。現在の低賃金層は生きていくため、食べていくためにやむをえず労働力の窮迫販売を行った昭和三〇年代前半の低賃金層とは根本的に異なっている。
 現在の低賃金層の主力をなす女子パートタイマー、高齢者、定職につかない若年層の三つのグループは、それぞれ夫の所得、年金、親の所得という核になる所得を持っており、大部分は働かなくとも生活に困らないが、働く時間があり、少しでも生活が豊かになればということから就業していると考えられる。
 (中略)
 従って、現在の低賃金層はかつての低賃金層とは質的に異なった「低価格労働供給層」として理解しなければならない。
経済企画庁総合計画局編『21世紀のサラリーマン社会』1985 東洋経済新報社 p.2,3)

立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点「若年者雇用問題」文献表 http://www.arsvi.com/d/y01.htm 内、http://www.arsvi.com/b1900/8508kk.htm より

 
ここで、「現在の低賃金層」が「核になる所得」を失った場合、正規雇用層にまで過剰な合理化、効率化が進行した場合の対策は等閑視されている。低成長時代は誰にとっても想像の埒外にあった。
そしてバブル崩壊から低成長時代に入り、新しい低賃金層は「核になる所得」を失い、正規雇用層の待遇は低賃金層のそれと変わらなくなる。
そもそも上記の最初に置き去りにされている、「食べていくためにやむをえず労働力の窮迫販売を行った昭和三〇年代前半の低賃金層」は昭和60年代にも依然として存在しており、今日の狂乱とは、なかったことにされていたその層が今日において一般層との区別をなくしてきている、ということだ。
20年以上前から日本において公的な制度面での貧困者と労働者の生活の保障はなく、まるごと企業福祉に任されていた。貧困と低賃金労働者の福祉は公的な問題として取り上げられず、それはいつ眼前に現れても不思議ではなかった。
 
つまり、バブル景気の時点で既に、日本の企業には、
・「非正規雇用者を取り入れる潮流」と、
・「過労死と呼ばれる言葉に代表される長時間労働」や、
・「労働者の権利を無視したタコ部屋労働などの劣悪な労働状況」があった。
それが、バブル崩壊後の人件費の合理化と合流し、ただでさえ制度面での下支えのなかった労働環境は賃金の面でも底穴が開き、労働市場の縮小も同時に進行した結果、失業率は景気回復期でさえ以前の水準に戻ることはなかった。
 
このうちいちばん重要だと思われる、「非正規雇用者を取り入れる潮流」が実際にあったのかについては、政府統計を参照できる。
 

厚生労働省『平成21年版労働経済の分析 −賃金、物価、雇用の動向と勤労者生活−』 http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/09/index.html より)
 
表によれば、1984年に15.3%だった非正規雇用者の割合は、1990年には、既に20.2%に上昇している。24.9%になるのが2000年であることを考えると有意な伸びだ。30%を超えるのが2003年なので、ここにも急な伸長があるにせよ。
 
ではどうすればいいのか。雇用の正規化を目指すのは困難であると思われる。合理化は進展された、しかし企業に体力はない。平成15年から倒産企業はまたしても増加している。雇用人員判断はリーマンショック後急激に人員過剰に転じた。製造業への派遣を一転して禁止する、最低賃金を引き上げるなどの政策が協議されているが、おそらく倒産企業はさらに増え、違法な業務状態が今以上に蔓延するだろう。
筆者は、
労働基準法違反の厳罰化
生活保護の給付の見直し
が行われるべきであると思う。労働基準法の罰則規定は第百十七条以下に定められているが、最高で一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金と、多くの人間の生命に関わる過失の罰としては軽いものであると言わざるを得ない。
この二つが行われれば、少なくとも社会不安と自殺者は減ると予想する。財源は所得税累進課税強化であろう。非生活必需品に限ったものであっても、消費税の増税や、法人税の引き上げは経済の硬直化につながる恐れがある。高所得層の消費は中、低所得層の所得にまで波及しないのだから(詳しい論証の必要があるが経済学を一から学ばないと出来ない、かつ対策を考える上でいちばん重要なのはそこだと思うがここでは予断を許されたい。)、課税を強化するのも止む無く思われる。
 
まとめ――近年の日本の労働問題は、戦後の長きにわたり、「労働者と貧困者の自由と生存を企業によらず保障する制度」の確立を、うかうかと怠っているうちにバブルがはじけたことの結果であり、その一刻も早い整備こそが最も有効な労働問題解決の方策だろう。
 
もっと簡単なまとめ――法律や制度で普通の人の普通の暮らしを守ってなかったので、バブルがはじけたらみんなひどい目にあった。普通の暮らしをもっと法律や制度で守ろう。
 
※結局一般論かよとお思いの方、私程度ではこんなものです。あとレポートにまるまるお使いになりたい学生さんには速やかにばれて大事な進級、あるいは卒業単位を落とす呪いがかかります。はてなSEOをなめてはいけない。