探査機とインターネットのための(長くない/断片的な)歌

i

みな探査機に心を見たいようだった。青い重力の井戸の底から、彼方に向かって放り上げる。生物の生活に使われる可能性さえなく、人間以外の誰にも意味のない、限りなく無に近い孤独の中で。

ii

のたうちまわって生きたいと思った。幸せになるとか、子供を作るとか、詩を書くとか。有名になるとか、成功するとか、夢を叶えるとか。それとは違うが、似たように。

iii

インターネットの上で。私は誰かの人生の断片を読んだ。私は彼を消費していた。彼は私に言っていた。私は、彼は、彼女は、ここにいます、ここにいました。私を、彼を、彼女を、消費してください。どうか、認めて、読んでください。

iv

タイタンの妖女』によると、水星に棲む小さな生きもの、ハーモニウムには、言葉がふたつしかないらしい。「わたしはここにいます」、「あなたがいてくれてうれしいです」。

v

機械でできた私たちの使者は、確かに私たちの落とし子、人以上に人そのものなのだろう。人間はあるだけで言葉なのだ。真空に向かって(贈られた/送られる)。そのように、ただそのようにありたいと思った。
(2010-12-12 22:56:01)