0-01-09から1日間の記事一覧

探査機とインターネットのための(長くない/断片的な)歌

i みな探査機に心を見たいようだった。青い重力の井戸の底から、彼方に向かって放り上げる。生物の生活に使われる可能性さえなく、人間以外の誰にも意味のない、限りなく無に近い孤独の中で。 ii のたうちまわって生きたいと思った。幸せになるとか、子供を…

残酷であるとはどういうことか。 それは、善人でも悪人でも、相手がたとえ誰だとしても、災害のように全くの偶然によって不幸をもたらすことではないか。 善にせよ悪にせよ、あるいは美にせよ醜にせよ、ある属性のものにだけ残忍というのでは、理由がわかっ…

時間と歌

母と私は老人ホームの祖母を見舞いに来ていた。午後二時、入居者たちの集うホールには大きくとられた窓から光が満ちて、どこからかラジオの音が聞こえてくる。 ラジオから流れる歌に、いい歌だね、紹介を聞き流してしまったけど誰の歌だろう、と祖母が尋ねる…

傘折り男

数年前のこの街で、翌日晴れると予報された雨の日には、コンビニや商店の傘立てに置かれた傘を折っていく男が出没していた。 この街の住人は皆ビニール傘しか持たなくなったし、傘折り男の噂を知らない不運な来訪者は、大切な傘の無残な姿にしばらく消えない…

恋をする、家族を作る、子供を愛する、本能。本能というときに自分以外の誰かを主語にしてはいけない。それは確かに自動的で、あなたにとっての本能ではあるだろうけれど、私にとっての本能であるとは限らない。そこの猫や犬や蛇や蛙、一匹一匹、一人一人の…