時間と歌

母と私は老人ホームの祖母を見舞いに来ていた。午後二時、入居者たちの集うホールには大きくとられた窓から光が満ちて、どこからかラジオの音が聞こえてくる。
ラジオから流れる歌に、いい歌だね、紹介を聞き流してしまったけど誰の歌だろう、と祖母が尋ねる。
さすがの母もこれには応えたらしい。化粧室に行くと言って出て行ってしまった。
私は祖母に教える。これは私もとても好きな曲だと、歌っている祖父の名と、題名になっている祖母の名を。
それを聞いて彼女は、私の名前と同じだ、嬉しい偶然もあるものだ、と言って穏やかに笑ったりするのだった。
(2010-01-17)