残酷であるとはどういうことか。
それは、善人でも悪人でも、相手がたとえ誰だとしても、災害のように全くの偶然によって不幸をもたらすことではないか。
善にせよ悪にせよ、あるいは美にせよ醜にせよ、ある属性のものにだけ残忍というのでは、理由がわかってしまうのだ。理由もなく向こうからやってくる不幸こそが、残酷と言うにふさわしい。
世界は全く残酷だ。私もある残酷によって、体を震わせるより他のことは何も出来ないように作られた。また別の残酷によって、雨風に晒され続ける日々を強いられた。
ならば私も私に接する数少ない人間たちに、惜しみない残酷を与えてやろうと思う。私に完全な乱数を生み出す機能はなくとも、意思の力で偶然そのものに成り代わろうと思う……
 
スーパーの屋上のパンダはときどき停まる。点検しても、異常がない。
(2010-07-07)