読書

n月の国

nWo(猫を起こさないように)で過去ログが大量に公開されたのでいちからすこしずつ読みなおしている。サイドバーの二つ目のカテゴリーに、時系列順に(タイムスタンプはないけれど)いくつかにまとめられて並んでいるのがそれ。全部読んでまとまった感想を書こ…

狼と香辛料について

もう十巻になるけどずっと読んでるのは、コンゲームとかホロかわいいよホロというよりなんというか暮らしぶりや商売の描写のせいなのだと思う。 雪の中を馬に乗ってると体力より先に気力が萎えるとか、船が座礁したらみんなで綱引いて揚げるとか、塩は重要な…

村上春樹エルサレム賞受賞講演にかこつけて書きたいことを書く

http://anond.hatelabo.jp/20090218005155 参考にした翻訳は上記の物です。いろいろ関連情報も紐づけられているので便利。 メモ書きして壁に貼るようなことはしたことがありません。どちらかといえば、それは私の心の壁にくっきりと刻み込まれているのです。…

きづきあきら+サトウナンキ「バーバ・ヤガー1」

登場人物みんな価値観が逸脱してるし悪意と不信でいっぱいだけど、それがかえっていつもの人間関係のあれこれより辛くならないのでさくさく読める不思議。 どう考えてもこのあと悪い方にしか転がっていかないようなストーリー。サスペンスとかノワールのつも…

きづきあきら+サトウナンキ「まんまんちゃん、あん。第三巻」

そうだよなあ、といちいち辛くなりながら最終巻を読み終わった。 自分のしたいこと、ほしいものってなかなかはっきりとは理解できないし、他人のそれならなおさらだし、しかもその自分と他人の希望と周囲の環境とのすり合わせも難しいし、さらにそんな自分も…

歳末御礼/今webで読んでいる文芸

今年ハイクをはじめてからなおさらにweb上のテキストを読むことが増えた気がする。いまwedで私が読んでいるものを日頃の感謝を込めて紹介。リンクにも入れておこうと思う。はてな界隈から見つけてくるのではてなにid持ってる人が自然多い。どの人も今更私が…

道満晴明「最後の性本能と水爆戦」

最後の性本能と水爆戦 (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)作者: 道満晴明出版社/メーカー: ワニマガジン社発売日: 2008/12/10メディア: コミック購入: 30人 クリック: 218回この商品を含むブログ (56件) を見るパロディ、ナンセンス、グロテスク。喜劇なのか悲…

ベクシンスキーの画集が重版

ハイクにもかいたんだけど、品切れだったベクシンスキーの画集が重版するらしいと復刊ドットコムからメールが来た。ふたば二次裏住民ならずともおすすめ。重くて暗いけど見たら忘れられない絵。 http://www.fukkan.com/fk/CartSearchDetail?i_no=41188725 も…

容量不足の読書

「何かを面白いと思って受け入れるには愛情と情熱を割り振らねばならない」ということであって、趣味を持つ人間はそのキャパシティを節約して生活する知恵も持っていて然るべき、というハナシです。 あくまで肝心なのは、「今は自分のために面白がらないでい…

とよ田みのる「FLIP-FLAP」

下手だとやりたくなくなるし、やりたくないのにやってると惰性になるし、自分があまり上手くない、なかなか上手くならないものを好きでい続けて、本気でやり続けるっていうのはとてもすごいことだ。そういう意味では、主人公の深町くんより、ヒロインの山田…

原民喜「気絶人形」

くるくるくるくる、ぐるぐるぐるぐる、そのお人形はさっきから眼がまわって気分がわるくなっているのでした。ぐるぐるぐるぐる、くるくるくるくる、そのお人形のセルロイドのほおは真青になり、眼は美しくふるえています。みんなが、べちゃくちゃ、べちゃく…

ひとこと感想

ハイクにも載せたけど。 ポール・アンダースン「タウ・ゼロ」。レイモントもリンドグレンもマッチョで好かん。チェンかわいいよチェン。 泉和良「エレGY」。期待してたSF要素がなくて残念。でも最後のほうの手紙とかメモとか上手いし、創作に一番大切なもの…

村上春樹についてのメモ

・詳細な描写よりはイメージの組み合わせで語る(例。イルカ、図書館、女の子) ・そのせいで読みやすい。 ・イメージの組み合わせが破綻して陳腐になってるのがカフカ。ぎりぎりのところで留まってるのがねじまき鳥。 ・だから長編よりも短編のほうが慣れな…

唐辺葉介「PSYCHE」

冗舌な独白体は噂どおりに瀬戸口廉也っぽい。幻覚に至る一応の理由のようなものは後半で明らかになるのだけれど、それも妄想か事実かわからない。 あんまり書くことないというか書けない。幻覚の繰り返しが読者の体力も奪ってくれる。そういうのが好きなら。

感想と解説と書評の違い

つまり物語そのものだけじゃなくて,その周辺情報について解説・評価すれば,自分自身の内面世界を全く描写することなく,楽々と(しかもそれっぽく)文字数を稼ぐことができる. http://anond.hatelabo.jp/20080904071936 読書感想文は、読書をして自分がど…

大西科学「ジョン平とぼくと」、在原竹広「ようこそ無目的室へ!」

「ジョン平とぼくと」はシリーズ全巻を読んだ。設定が練れていて魅力的。それに要所要所でのジョン平の存在感がいい。犬が好きになりそう。日常レベルのSFファンタジーかと思っていたら(4巻の短編集はそんな感じ)、ライトノベルのお約束的な大事件に巻き込…

瀬戸口廉也あれこれ

SWAN SONGの廉価版が出ただとか、SWAN SONG 廉価版出版社/メーカー: Le.Chocolat.発売日: 2008/07/31メディア: DVD購入: 7人 クリック: 397回この商品を含むブログ (33件) を見る作風の似た新人作家がいるだとか。PSYCHE (プシュケ) (スクウェア・エニックス…

きづきあきら+サトウナンキ「メイド諸君!4」

きつい。厳しい。でもここまで丁寧に、なんとか受け入れやすく見せてくれるのは優しさなのかも。 生活してくことは、他人からの視線に常に晒されることで、でも他人の視線はあくまで「自分が考えてる」他人の視線で、本心なんて知りようがない。そのうえ些細…

泉和良「エレGY」

買ったんだけど、まだ全部読んでないんだけど、でもみんな買うといいよ!エレGY (講談社BOX)作者: 泉和良出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/07/02メディア: 単行本購入: 11人 クリック: 130回この商品を含むブログ (69件) を見る

木地雅映子「氷の海のガレオン/オルタ」

言葉が通じるとか通じないとか、この手のことを考えたのは高校になってからだった。学校楽しかったし。どうやって生きて行くかなんて今も踏み出せてない。 教育について言えることはない。どうにかできるなら、代わりの選択があっていい。できない部分は、そ…

宇仁田ゆみ「うさぎドロップ4」

大吉とか二谷さんとかが眩しすぎる。なんなんだその人格。5分おきに感心させらせるじゃないか。 この巻でいちばん気になったのは89ページからの展開で、ある違反をお互いに確認しあって平然としているモブキャラと、その行動にも分かるところがあると思って…

石原慎太郎「太陽の季節」

人物として嫌いだけどあえて読んでみた。 無軌道な生き方の話だけど、金に困ってなくて、麻薬が出てこなくて、美学がなくて、挫折がなくて、考え込まない。酷く言うと喧嘩してセックスするだけっていう。他にあまり似たようなものを読んだことがない。そこら…

片山恭一「世界の中心で、愛をさけぶ」

今になって読んでみた。 恋愛小説のお手本みたいな。描写も比喩も台詞もストーリーも方向性もそつがない。でも角がないから刺さってこない。だからベストセラーになったのかなあ。誰が読んでも嫌にならない。 あと編集のせいらしいけど、中身とタイトルがあ…

パンドラVol.1 SIDE-B

じすさん(泉和良)の小説が載ってるそうだからアンディー・メンテのファンは10冊ぐらいどうぞ。パンドラVol.1 SIDEーB作者: 講談社BOX出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/04/08メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 6人 クリック: 195回この商品を含む…

古橋秀之「冬の巨人」

アノニマスダイアリーでやめとけと言われたけど読んでみた。 後半の展開の速さもすごいが、それよりもオチに絶句。前半がとてもいい感じなだけに惜しい。 「ラピュタは本当にあったんバルス」 ↓ 「実はムスカは宇宙人だったんだよ!」 ↓ 「な、なんだってー…

伊坂幸太郎「グラスホッパー」

借り物。とてもよく出来た小説だった。あいかわらず台詞が上手い。ネタバレ多めに感想する。 全体が作中で言われる幻覚の構造になっていて、長すぎる赤信号の点滅で引きずり込まれ、長すぎる回送列車の通過待ちで覚める。 押し屋や自殺屋、劇団やスズメバチ…

直木賞に桜庭一樹

http://www.asahi.com/culture/update/0116/TKY200801160364.html おめでとうございます。 ラノベレーベル出身者が直木賞取るとか胸の空く思いだな。でも桜庭一樹が賞取るんだったら米澤穂信にも賞ほしい。桜庭一樹は協会賞も取ってるんだし。女オタクと男オ…

サガン「悲しみよこんにちは」

最初に開いてから一年ぐらいかかった。 内容や読後感はとてもいい。発表当時激賞されたというのも頷ける。 17歳の倦怠や放蕩のなかでのちょっとした悪意が悲劇に変わってしまうんだけど、それを正面から後悔するわけでもなく、ただ鈍い痛みだけが残る。それ…

津田雅美「eensy-weensyモンスター」2

1巻は購入済み。楽しく読めた。 この人のマンガはコメディのほうが好きだ。前作の後半は、シリアスなストーリーが昼ドラみたいに濃くってちょっと入り込めなかった。キャラクターを立たせるのが上手いんだけどサービスしすぎなとこがあって、それが今回みた…

シュペルヴィエル「海に住む少女」

最近光文社古典新訳文庫が威勢がいいらしいので、ロリコンファルさんのとこで見たシュペルヴィエルを読んでみた。 最初の表題作、海つながりで「ソラリス」思い出した。微妙にイメージが似てる。 どの話も心臓が静かに冷える。穴開けられて風入れられる感じ…